日堯上人の思い出

八王子南教区

日堯上人の思い出

  

ありがとうございます。

 第二世御住職の日堯上人と私は、第5支庁及び京都本庁にて、ともにご奉公させていただく期間が長かったので、是非、その思い出話などお聞かせいただきたい、と拝命いたしましたので、この場を借りてご披露させていただきます。

 

 まず、私のこのご奉公については、今から約10数年前、平成21年より、御導師から「Sさん、どうか頼むよ」とのお話をいただき、そして御導師からバック

アップをいただきながら、東京の乗泉寺を中心とした、第5支庁50数ヶ寺の財務参与を拝命したことから始まりました。

 特に金銭管理については、毎年、本庁でのご奉公として、毎年京都にて本庁監査室指摘事項を役員皆さまと共に改善してまいりました。

 その他本庁の御奉公として、本宗諸機関(学校・研究所・佛立新聞等)監事、それも、このご奉公を拝命するのは僅か5名のみ、その1人としてお役を拝命しましたので、私にとりましては、非常に細かく、神経を使いながらの御奉公でしたので、非常にくたくたになるご奉公であったと振り返ってみて感じております。

 ですが、そのような時、日堯上人は、本山宥清寺の本堂や本庁内でお会いした際、

「いつもご奉公資料見させてもらっていますよ。頑張っていますね」

「大変なご奉公、本当にお疲れ様です」

と、温かく、そして優しくお声をかけてくださいました。そして、

「何か困ったことがあったらいつでも私に言ってください。なんでも協力しますよ」

と激励くださったこと、大げさではなく、これが本当に励みになり、今思い出しても涙が浮かんでまいります。

 

 普段の御導師はどことなく強面なところがあり、お声をかけづらい部分も少々ありましたが、ふとした時にやさしく語りかけてくれるその一言一言には間違いがなく、すべて私のやる気に繋げてくださる、大きな魅力がありました。

 御導師のお優しいところは、大勢の人前で声高に仰るのではなく、二人になったときにそっと語り掛けてくださるところにありました。

事ある毎、ふとしたときに

「Sさん、お看経あげているかい?」

「困っているときに必ずお計らいいただくのがこの御信心なんだから、怠けてはいけないよ」

と私に厳しくも優しくお折伏くださいました。

それというのも、工業用ミシンを扱う会社に勤めていた自分は、出張族であったため、北へ西へと単身赴任に出ていることが多く、なかなかお看経やお参詣が懈怠してしまう状態に陥りやすかったのです。

 

 この御導師のお言葉をいただき、赴任先の地では、お看経を怠けないように、最寄りの佛立宗寺院にお参詣を心がけておりました。

主な赴任先は会津・松江(お参詣は鳥取まで)・宮崎(お参詣は鹿児島まで)でしたが、この御導師のお折伏によって命を助けられたと思える出来事があります。

 

 62歳、会津にいたときの話です。会社にて会議をしている際、(私自身は記憶にありませんが)急にイビキをかきはじめ、倒れこんでしまいました。その場に

いた一同、びっくりして慌てふためいておりましたが、ちょうどその場に居合わせた部下の奥さんが大病院の婦長をされていて、即座に「これは脳だ!」と判

断し、救急車が来るまでの間、適切に処置をしてくれ、救急車到着後も、隊員の方に「間違いなく脳の異常なので、速やかに処置してほしい」とお願いして

くれました。

 それだけでは終わらず、運ばれた先の病院では、ちょうど学会が開催されており、しかもそこに、脳外科の権威といわれる方々が大勢集まっておられたため、そこにいる先生方のお力を借りながら、速やかに処置を施してくださいました。

 診断の結果はくも膜下出血。発症したら十中八九助かることがないと言われるこの病気も、御宝前からのお力をいただいて、何の後遺症もなく無事に健康を取り戻すというお計らいを頂戴することができたのです。

 

 これはまさに、御導師から頂戴したお折伏、その言葉に従って、毎日朝参詣をさせていただこうと改良させていただいたお計らいだと改めて感じております。

 

学生時代、スキーに明け暮れておられたという御導師でしたから、会津にご奉公の際、私に「自分は学生時代によくここへ来たんだよ、ここも、あそこも」

と指さしながら仰っていた無邪気な顔が忘れられません。

 

 86歳を迎え、足腰も弱くなり、なかなか外にも出る事も叶わなくなりましたが、そんな今であっても、

「Sさん、お看経あげているかい?」

と御導師が厳しくも優しく語り掛けているような気がしてなりません。

 御姿を拝見することはできなくなってしまいましたが、遠く寂光の地からいつもご覧になっている、と気を引き締めて毎日を送っております。

 どこまでご奉公できるかわからぬ老骨の身となりましたが、命の及ぶ限り、御導師のお言葉を胸に、これからも励ませていただきたいと思います。